夢…

夢のいた場所


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(冒頭部分)
 
 最初の一群の男達が〈月光閣〉と書かれた大きな木札のさがった門から中庭にはいって来るのは、新聞配達の少年が夕刊を配りに来るのとほとんど同時である。男達は、二階建の家屋に三方から抱き込まれた中庭に足を入れると、急に魚の群れのように動きを揃えて建物の内ぶところにあたる玄関へと進んでいく。今さしこまれたばかりの新聞を玄関脇の状差しの自分の枠から引きぬき、そのまま歩みもゆるめずに彼等は両開きのドアを押して暗い屋内に吸いこまれていく。
 
 急に靴音が大きくはねかえる薄暗い玄関の正面には、表面がくろずんでしまった横長の大きな鏡がかけられている。前を通過する帰宅者達の姿は、薄暗がりに溶けた鏡の奥からゆっくりと浮上するように現れた。やあ、帰って来たな、お前――。濁った水溜りの庭から斜めに自分の像が浮き上がって来るのに出会うと、コンクリートの通路の上でようやく彼等の足は遅くなる。
 
 二年前、小早川和夫が黒いスーツケースをさげてはじめて月光閣の玄関にはいった時も、鏡はそこにひっそりと身を埋めていた。その時、ギャバジンの紺のコートを身につけ、髪をきっちりと七三に分けた緊張した表情の痩せた若い男に、小早川和夫はこの鏡の中で出会った筈だった。

黒井千次/初出「文芸」(昭和47・11)




夢の途中


作詞 来生えつこ
作曲 来生たかお


さよならは別れの 言葉じゃなくて
再び逢うまでの 遠い約束
現在を嘆いても 胸を痛めても
ほんの夢の途中
このまま何時間でも 抱いていたいけど
ただこのまま冷たい頬を あたためたいけど

都会は秒刻みの あわただしさ
恋もコンクリートの 篭の中
君がめぐり逢う 愛に疲れたら
きっともどっておいで
愛した男たちを 想い出にかえて
いつの日にか僕のことを 想い出すがいい
ただ心の片隅にでも 小さくメモして

スーツケースいっぱいに つめこんだ
希望という名の 重い荷物を
君は軽々と きっと持ち上げて
笑顔見せるだろう
愛した男たちを かがやきにかえて
いつの日にか僕のことを 想い出すがいい
ただ心の片隅にでも 小さくメモして


1981年(昭和56年) 薬師丸ひろこ



愛はかげろう


作詞/作曲 三浦和人


窓ガラス 流れ落ちてゆく雨を 細い指先で なぞってみる
くもりとかして すべる指先に 伝わる冷たさ 心にしみる
忘れ去られた 部屋の片隅 貴方の影 今もゆれてる

愛はかげろう つかの間の命
激しいまでに 燃やし続けて
別れはいつも 背中あわせに
人の心を ゆらして

別れ言葉を 口にする貴方は いつもとちがって やさしすぎた
はき出すタバコの 煙の影が 教えてくれた 偽り言葉と
あつく いだかれた日々を 倖せと言えば かなしい

愛はかげろう さめきった愛の
過ぎ去る後に 残るものは
いつも女の 乾いた涙
さまよい歩く 迷い子

愛はかげろう つかの間の命
激しいまでに 燃やし続けて
愛はかげろう つかの間の命
激しいまでに 燃やし続けて


1980年(昭和55年) 雅夢



時 色 案 内 人 / つ か だ よ し ひ ろ

http://www.ac.auone-net.jp/~tokiiro/

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by tokiiro201 | 2010-05-26 12:38 | 2010年


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